北海道の北側の海、オホーツク海。
毎年2月になると流氷が接岸します。
結構前からその流氷と一緒にクリオネが流されて、岸から掬えるという話を聞いていたのですが、
調べてみると実際に採っている人もいるみたい。
流氷の溜まった砂浜からウェーダーを履いてザグザグと入っていって探す。
なんだそれ、絶対楽しいじゃないか。
是非とも採ってみたい。
今回、ペンさんと うたのすけさん という強力なお二人を誘い、試される大地・冬の北海道へと向かいました。
クリオネは何の仲間?

クリオネ
見た目からは想像しにくいですが、
実はクリオネは巻貝の仲間。
下を這っていた貝が、いつしか貝殻をなくし、浮遊することに特化していった…となればとても魅力的な種族です。
可愛らしいフォルムで翼足という翼のような部分をパタパタと羽ばたくように水中を漂っていて、流氷の天使や氷の妖精なんて呼ばれるのも納得。
大きさは2、3cm程度ととても小さく、胸と頭にはピンク〜オレンジの模様があります。
見た目とは裏腹に、食べているものはミジンウキマイマイという貝の仲間で、頭から触角のようなもの(バッカルコーン)が出てきて捕まえる様は少しホラーです。気になる方はYouTubeでドウゾ。
なんでも2018年現在、クリオネの仲間は世界に5種類いるそうで、
そのうちの3種類が日本で見ることができるらしい…(2017年に新種記載された種類は深海棲みの為出会うのは難しいようですが)。
改めて日本ってすごい。
カナダにいるやつは10cmくらいになるそうで、
是非それも見てみたいですね。
初めての空港・女満別空港
さて、私自身何度か北海道には行っているのですが、
今回降り立ったのは女満別空港。
いつも新千歳空港を利用しているので、
初めての空港にウキウキします。
ちょっとローカルな空港って特別感を感じますよね?

女満別空港
とりあえず移動手段。
うたのすけさんが探してきてくれた格安レンタカー屋の受付へと移動。
空港内に受付があるので、レンタカーを借りるまでは寒い思いをしなくてすみます。
おやおや、受付のお姉さんがとても綺麗。
流氷の天使の前に、ここにも天使が!と思ったら私らの乗るレンタカー屋ではなかったです。残念。
試してくるぜ北海道。
うたのすけさん、次はニッ◯ンレンタカーで。
予想外に運転は快適
とんでもない過酷な運転を強いられるかと思っていたら、思いの外運転は快適。

ロケーションは抜群。
雪国なので除雪はしっかりしているし、
晴れてさえいれば運転はそんなに苦じゃない。
気持ちのいい天気で、本当に荒れなくてよかった。
しかし、少し風が吹くと雪が舞って一瞬前が見えなくなる場面もありました。
北海道の雪は軽くふわふわサラサラなので舞やすいのですね。

水分が少ないため、サラサラなのだそう
思っていたよりも快適な状況に、
こりゃ楽勝だな〜なんて思っていたのですが、
この後、海に到着して絶望することとなります。

とりあえず寄った漁港
あれ?海は??汗
なんと、漁港内に氷が張り、雪が積もり、水面が露出していません。
本命の砂浜ポイントではないのですが、
漁港でも掬うどころか探すことすらできないとは…。
3人で絶望(笑)。
いやいや、ここだけでしょ…?
と現実を受け入れられない我々は
その後数ヶ所寄るも、どこもこんな感じ。
運転しながら見える景色も見渡す限り海が白い……。
それからしばらく走り、何気なく寄った漁港で
ついに

われています!本命は!?
あったあああああ!!!
割れてる!
クリオネを見つけたようなテンションの高まり。
こんなところを探していたんだ!!とみんなで歓喜。
3人でくまなく探し、
ペンさんは長網で流氷の隙間を探る…も、
本命らしきものは見られず。残念。
ここからペンさんの怒涛の聞き込みが始まります。
するとすぐ近くで、採れるんじゃない?という漁港を教えてもらえました。
さっすがペンさん!!
こうした上手くいかないし想像と違う方向に向かってるけどなんとなく見えてくる、それが楽しいなーと私は毎度思います(笑)。
そして教えてもらったポイントへ
到着してすぐに……

いたーーー!!!(わかりにくい)
手前の影の左ちょっと上、
なんとなく見えるオレンジのポッチがクリオネです。
潮にのって、ただただ流されてゆくクリオネ。
よっしゃ掬おう!!網!網!!!
急いで網を持ち出しますが、、
短い……。
当初砂浜で探す予定だった為、
網が短くて全く届かない。
目の前にいるのに!!
天使に気持ちが届かない……!!
うわああああ!!
一瞬飛び込もうかとも思ったのですが、
飛び込んだ勢いでクリオネがどっかいきそうだったので冷静になりやめました。寒そうだし。
さてどうしたものか。
ここで思いついた苦肉の策は…

テッテレー。竿に網をくっつけて即席ネットティップ!
竿があったので、竿にくくって強制的に2mくらいの網に。錆びそうだ。
少し不恰好ですが、この際届けばなんでもいい!
ポイントへ戻ると、さきほどの個体はどこかへ流れて行ってしまいました。。
が、再び目の前にチャンスが。。
今度こそ届く!!
そしてそして…

きたーー!!!流氷の天使捕獲!
やったー!!クリオネ!
なにやらブニョっとしていますが、死んでいるわけではなく、
陸にあげると重力に負けてペチャンとしてしまいます。
急いで瓶に入れると元気にパタパタと泳ぎ始めました。

青い空、白い雪、瓶には天使、僕 凍死(寸前)
可愛すぎます。
少し遠回りになりましたが、
やっぱり初めての1匹は何にも変えがたい感動がありますね。
全て輝いてみえる。。笑
他の2人も無事捕獲し、
とりあえずは全員安打。よかった!!
誘った身としてはボウズはさけたいものですよね。
そして別の漁港でも発見。

唯一ちゃんとした網装備のペンさん。ロングブーツも履いています。
こういった漁港で探す場合、縁よりも雪の方がせり出していることが多く、踏み込むとそのまま雪とともに落ちてしまうので、注意が必要です。
水温も非常に低く、一瞬で低体温症になってしまい、上がってこれなくなるのだとか。。
水温を計ってみた
気温は寒くても、水温は意外と暖かい、なんて事はよくあります。気になったのでわざわざ家から水温計を持ってきてみました。
すると…

まさかの1℃未満…
マジか。
デジタルなので若干の誤差はあるにしても想像以上の低さ。
ちなみに気温は-5℃〜-8℃。
指先が濡れるとそこからあっという間に体温が奪われます。
落ちたら本当にやばいですね、
飛び込まなくてよかった。
天使が悪魔に変わるところでした。
その後、夜も探しましたが、何故か夜中はイソメのようなものしかおらず。
昼間にポツポツとしたクリオネは全く見れない。どうなっているんだ??
体力も限界を迎え、朝まで寝ることに。
翌日
朝になると再びクリオネが!!
しかも昨日よりもはるかに多く、
多いときは3匹、4匹一度に現れることも。
流れてくる、というよりは湧いくるという表現の方があっているほど、気づくと浮いています。

天使がたくさん!!
掬っては瓶にいれるという地味な作業なんですが、何せ関東では見られないクリオネ。
目の前を通過していくだけでも何だか嬉しい。
やっていると、気温が低すぎて瓶の露出している上部の海水が徐々に凍ってゆきます。
数時間やっていただけで、瓶の中半分はミゾレ状態に。寒すぎる…。
ちなみに網も

凍りまくり。この通り
振るだけで凍って固くなります。
とんでもない寒さ。さすがは試される大地…。
驚きだったのが、まれにクリオネが瓶に移動できず、網にくっ付いてしまっていて凍ってしまうことがありました。
可哀想なことをした…と思い、急いで瓶に移すも丸くなって全く動かない。
こんな小さな生き物だもんな、凍ったらイチコロだよな…ごめんよ。。なんて思っていると、
しばらくすると元どおり泳ぎだしました。
その後も、わざとではないのですが
網に引っかかっていたり、瓶に移しきれずに縁についてしまっている個体が数体いたのですが、
いずれも戻せば元気に泳ぎだす。
大きさのわりに生命力が強すぎる説。笑
対寒能力がかなり高いのかもしれませんね。
さすがは南極北極どちらの海にも仲間が生息しているだけはあります。
それと、瓶の中を見てみるとちょっと違う個体が混じっていました。
最初はクリオネが凍って、外套膜がおかしくなった個体なのかな?なんて話していましたが、
よく観察すると形も違うし、これは別種じゃ?なんて可能性が。

左側の個体。明らかにオレンジ部分が多く体型も違う
ハッキリとは言い切れませんが、
ダルマハダカカメガイではないかな?という結論でしたが、どうでしょうか?
クリオネことハダカカメガイとダルマハダカカメガイの2種類に出会えたのだとしたらなんだか浪漫がありますよね。
気づけばみんなそこそこの数採れて満足。
予定は変わりまくりましたが、とっても楽しかった!結果がついてくればなんでもオッケーですよね。
まとめ

本当に不思議な生き物だ
今回実際にきてみると、流氷が接岸しすぎてポイントを探すことが大変だったり、
実はクリオネが2種類採れていたり(多分)。
クリオネは凍ってしまっても海水に入れると復活したり。
夜間は全くいなかったのに、朝になった途端たくさん採れたりと予想外なことばかり。
こういった知らなかったことを知れるのが物凄く楽しいんですけどね。
ちなみに、私は楽しみが減ってしまう為、事前にはざっくりとしか調べずにいくのですが、
帰ってからは答え合わせというか、周りの人はどう思うのだろう?と色々と検索します。
調べていたら…クリオネ、夏でもいるところがあるそう。笑
ええ、流氷と一緒に流されてくるのではないんですか?わざわざ寒い時期にきたのに!!
これまた、気になるのでまた暖かい時期にも行かねばなりませんかね。
本当、わからないこと、知らないことばかりです。だからこそ楽しい。
これからも現場主義で色々な生き物を追って行きたいと思います。
試される大地より、クリオネでした。