シロザケ釣り後編 / 関東で鮭とばを作ってみた





前編で釣ったサケを食べてみることに。
というかそもそも参加した調査自体が
食文化を感じてもらう為のものなので、
これは食べないと失礼でしょう、ということでやっていきます。
川に遡上したサケはパサパサで
あまり美味しくないと聞いたので、
それなら以前から気になっていた
鮭とば作りに挑戦してみる事にしました。


鮭とばといえば北海道や東北地域の保存食的なもので、
潮風に晒してサケを乾燥させたものです。
海からくる塩っ辛い風がいい、という話もあり、
調べても関東で作った話は出てきませんでした。
まあ前例がないならやってみるまで。
干し柿とかと同じ要領だろって事でやってみました。





鮭とば作りに挑戦



工程としては、
1.腐りやすい初期は塩を使いながらとにかく乾燥させる
2.乾燥したら塩辛すぎてしまうので一度水で塩分をある程度取り除いてから再び乾燥させる
3.醤油やみりんなどで味をつけて再び乾燥させ、完成。
の3つ。
要はとにかく水分を飛ばすって事ですね。


近くに鮭とばを作った人はいないので、
毎年干し柿を作っている先輩の話を参考にさせていただき、
低温低湿度でどれだけ風に晒せるかというのがカギとの事でした。
納屋で北風に当てるのがキモとの事で、
納屋で一緒に干してあげようか?との
ありがたいお声がけもしていただいたのですが、
経過を細かく見たかったのもあるので今回は家でやることにしました。




何もかもが初めてすぎるので
わからないことしかありませんが、
とりあえずやっていくしかないっすね。
やっていきましょう。まず捌きます。


腹ワタを取ります




捌いてみると意外とデカいなーと思いますが、
水分が飛ぶと身も少なく感じるので
デカいと思うくらいが丁度良いと思います。
あと頭が大きいですしね。


衣装ケースナウ




食塩です。




塩はホームセンターで大量に安く売ってるのを買ってきました。
買いすぎると余るので2袋くらいで良いかと思われます。
衣装ケースを選んだのは加工がしやすいように。
一ヶ所穴を開けそこから水分を落とす作戦です。


シオザケ




とりあえず初回なので多めに塩を入れました。
実際もっと少なくてよかったと思います。


サケなのか塩なのか




後述しますが、塩パワーが結構凄かったです。
温度が上がるとサケがダメになってしまうようなので、
冷やすのと水分を飛ばすのを同時進行でやっていきます。


衣装ケース買ってから気付きましたが、
クーラーボックスでもよかったんじゃないか疑惑がでて
交互にやっていくことに(笑)。
サケ本体の上にも重石を置いて
強制的に水分を絞り出しつつ放置です。
保冷剤を使って冷やしながら水分を抜きました。


厚めに引いた新聞紙がびしょびしょに。






最初の2日間でかなりの水分が出てきたので
重石を置いたのは大正解だったと思います。
生物ってこんなにも体内に水分を蓄えているのだなと驚きます。


2日間もやると水分もだいぶ出なくなってくるので、
今度は吊して干していきます。


強そうなロープ




こんな感じかな






この時何で読んだのか、
10℃あたりから雑菌が増えだし、
15℃越えてくると次第に活発になるとかで、
とりあえず温度は15℃以下にする、を
目標にやっていきました。


最初の2日間の塩漬けにしてる段階で、
家中の涼しい場所はどこか温度を測りまくったところ、
トイレか風呂という二択になりました。


前者は普通に嫌なので夜間は風呂に干し、
昼間の暖かくなる時間帯はクーラーで冷やしながら
重石で水分を出していく作戦で行きます。
超巨大冷蔵庫を所有してる方がいれば
そこに入れてしまうのもアリかもしれません。


干す干す干す干す




これでもまだ水分が滴れてきますが、
最初の2日間に比べると随分少なくなりました。
それでも触ってみるとまだまだ水分を蓄えている感じで
想像以上に乾燥させるのが大変でした。
この時しっかり内臓のところを広げて
乾燥しやすくするのも重要だと思います。
僕は割り箸を折ったものを詰めて広げました。


それでも出てくる






乾燥させるなら風を当てたほうがいいんじゃないかと、
11月にも関わらず扇風機を引っ張り出してきたり。
夏場でも使わない「強風モード」で内臓側から夜通し風を当てます。贅沢なサケです。


オラー!!






使っている温度計ですが、
最高・最低気温を記録できる物を使用。
飼育で使っている物をそのまま使いました。


これなら昼間や夜間に
どのくらいの温度になっているのかが把握できます。
特に最高温度がどれくらいになっているかが生命線でもあるので、
家にいない時間や寝ている時間の温度をされるのはとても有効でした。





朝、温度が上がり始める段階で12℃以下。


夜間の最低温度




最低温度で8℃以下という感じに。
まあこのくらいなら大丈夫かなーと思いつつ、
油断はできないので結構ドキドキでした。


朝の仕事前にこれらは撤収、
昼間はクーラーボックスで冷やし、
夜帰ってきて涼しくなったらまた干すの繰り返しです。


当然湿度は上げたくないので、
鮭とば製作中はお風呂は我慢。
湯船に水は張らず毎日シャワー生活です。
朝サケをクーラーボックスに撤収後、
シャワーを浴びてから出勤。
帰ってくる頃には風呂場が乾燥しているので
また干すという感じです。


「風呂場はカビ生えたりするし湿度も高くて不向きでは?」
との指摘もありましたが、
湯船にお湯を張ってれば湿度高くなりますけど、
水分がなければ高くなりようがないと思います。
というかむしろ風呂場って
湿度を逃す方向で作られているはずで、
実は一番良い場所なのでは…?ともやりながら思ったり。
もっとベストな場所もあるかもしれませんが、
とりあえずこの時はこの環境がベストなように感じました。


あともしかしたらこの段階から
外の方が良かったのかもしれないんですけど、
この時は天候が不安定だったのと、
水分量が多いまま外に出しておくと
変な虫がきそうだなあという偏見で
室内で様子を見ました。
この巨体からとめどなく出てくる水分を見ていると
小型魚の干物を作るのとは訳が違うなと思います。


そんなこんな、これを5日ほど繰り返します。
するとだいぶ水分も出てこなくなったので、
ここいらで一度塩分を抜くことにします。


オラオラオラー!




ひたすら干していたのに今度は水につけ始めて、
状況分かっていない人が見たら
だいぶヤバいやつだったと思います。


冷やした状態でしばらく放置






薄くなった。




水分が抜けて随分と細くなってきました。
このまま仕事から帰ってくるまで放置。
2匹ともやって失敗すると怖いので、
とりあえず1匹ずつ時間差でやる事にしました。
早くもスタートからここまで一週間ほど。暇人か。




それらとは別に、
先に外の温度も計っておいたのですが、
良いタイミングで寒波がやってきてくれて
基本的に夜間は一桁代。
昼間でも15℃以下の気温になったので、
これなら安心して一日中外で干せるなーということで
外干しに切り替えることにしました。
ここまでくるとかなり干物っぽい感じになってきます。


外干し




ここで1週間ぶりに風呂解禁です(笑)。




この温度計がとにかく大活躍






サケ一号機が問題なさそうなので、
サケ二号機も続いて塩抜きをして
念のためサケ二号機は時間を短めに。




ネット導入




それと干してみると周辺に猫やらカラスやらが
集まってきていたので、ネットを被せて防御です。
このまま更に2日間乾燥させます。
それでもまだカチカチにはなりません。恐るべし水分。


その後押すと若干シナっとしているくらいになったら
頭を落として身を細かく裂いて乾燥させます。
その方がより乾燥しやすいかなということで。


良い感じだ




カッコ良すぎるので
このまま剥製にしたいくらいですね。
でもまあせっかくここまでやってきたので
鮭とば作りに専念します。




うおおカッコいい




がおー




断面はこんな感じ






それから身の方に味をつけるべく、
醤油やみりんをテキトーに混ぜた液に浸けます。
クソうまそうな匂いがプンプンしてきます。




これはちゃんと浸けたほうがいいやつ




この味付けが結構重要なので、
しっかり浸したほうがいい感じがしました。
味は人々の好みですね。
僕はバカ舌なので濃い目にしました。




付け根はそのまま、細かく裂きます




この時に付け根と繋がった状態で身を切ると、
一つで干せるのでオススメです。


こういう感じ。




ここから更に4日間ほど、
引き続き最高気温を見ながらやっていきます。
天気予報とも睨めっこで、
雨が降りそうなら取り込まないといけません。
頭落としてコンパクトになってからは
冷蔵庫に入れるのも選択肢としてアリかもしれませんね。
気温高そうな日や雨の日はそうするつもりでしたが、
いい感じに連日涼しく天気も良かったので僕はそのままいきました。




やられた頭




ネットなしの状況だとどうなるかの検証も兼ねて
小さい方の頭をネットの外で干してみた所、
見事にやられました。
どこに敵がいるかわからないので、
ネットで覆うのは必須だと思います。
本体を外に出さなくてよかった。。




カッチカチ!




ここまでくればほぼ完成!!
想像以上に硬くなってしまったのは誤算でしたが、
まあこんなものかなーなんて事で(笑)。


テキトーなサイズにカット




そのままでも、
お茶漬けにしても美味しかったです。
何切れか食べて問題なかったので、
某集まりで食べてみてもらったところ、
普通に美味しかった!との声をもらえて一安心。


作ってみると完成まで3週間(!!)くらいかかり、
値段が高いのも納得だなと思いました。
というか関東でやっているのが
そもそも間違いなのかもしれませんが(笑)、
できた時の達成感は半端なく嬉しかったです。


とにかく温度を把握する事、
水分をいかに飛ばせるかがカギですね。
雨続きだったりするとまた違った感じになりそうですが、
とりあえず僕がやってみた感じでは10℃前後をキープ、
初期の水分量が多い時は重石や扇風機でガンガン水分を飛ばす事でいけました。
必ずしも成功します!とは言えませんが、一つの目安として。




その後、頭部は乾燥標本として部屋に飾っているのですが、
特にニスがけなんかもしていないのに、
(普通の乾燥標本は防虫剤→ニスがけしています)
このサケの頭部には虫が一切つきません。
他の標本は虫食いにあったりしているので、
恐るべき塩パワーでした…。
作っていく過程でも塩の殺菌力にかなり助けられた感じもあり、塩への信頼度がかなり高まりました。
そんな色々な発見も含めて非常に勉強になった楽しい鮭とば作りでした。


サケのみ唯一ニスがけしてません




やってみたい方は是非!
無責任にやってみた感じなので
責任は持てませんが、
自己責任でやられてみてはいかがでしょうか。
自分で作ったとなるとなんとなく美味しく感じたりもしますよ(笑)。


久しぶりにだいぶ長くなりましたが、
お付き合いありがとうございました。


おしまい

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コメント

  1. くそコロネ(夢の天秤) より:

    親父の実家(小樽)では、新巻鮭を普通に庭先に吊るしておいて、晩飯のときに食べる分だけ削いできてそのまま食卓だったようです。最初の何匹かはルイベになっていて、後半はトバになっていたそうです。どっちにしてもそのまま火を通さず食べていたようで・・
    最近は北海道も暖かくなってきたのでルイベは無理だろうなと言ってました。
    他にはクジラ肉もつるしていたとか。
    最近は旨いトバは売ってないなとか言いながら買って食ってます。

    • makky より:

      そうなのですね、貴重なお話ありがとうございます!
      なかなか北海道出身の方と話をする機会がなく、関東で強行して作った感じとなりました(笑)。
      鯨肉を使っていたのも非常に興味深いです!

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